目次
「社員のために傘を用意したい。
でも置き傘は、結局こっちの仕事が増える」——そう感じて「傘 シェアリング」を調べ始めた総務担当者に向けて、この記事では仕組みと導入の進め方を整理します。
ゴールは、社内で「これなら回せる」と説明できる状態です。
傘シェアリングの仕組み――「傘を持つ」から「使える状態を借りる」へ

傘シェアリングは、街のあちこちに設置されたスポット(専用の傘立て)で傘を借り、別のスポットで返せるサービスです。
日本初の本格的な傘のシェアリングサービス「アイカサ」を例にとると、スポットは12都道府県に合計約2,500か所、駅では全国1,000駅以上に広がり、アプリ会員数は約100万人にのぼります(2026年7月時点)。
法人向けでは、この街のネットワークに「オフィス」を接続します。
社員は全国のスポットを会社負担で使えるようになり、必要ならエントランスや執務フロアに専用スポットを追加設置することもできます。
傘は耐用年数約5年の専用傘で、晴雨兼用の折りたたみ傘もあるため、雨具としても日傘としても使えます。
利用中に壊れても、追加の負担なく修理して使い続けられます。
アプリ不要で使える筐体もあり、「登録が面倒で結局使われない」という失敗を避けられます。
置き傘・貸し傘と何が違うのか
違いは、「街とつながっているか」と「管理が誰に残るか」の2点です。
置き傘は初期費用こそ安く済みますが、買った瞬間から補充・清掃・放置傘の処分が総務に発生します。
雨の翌朝には傘立てが空になり、誰が持ち出したか分からないまま買い足す。
大掃除のたびに持ち主不明の傘が出てきて、捨てる判断もつかない、という声もよく聞きます。
貸し傘にすれば戻ると考えたくなりますが、問題はもっと構造的です。
置き傘も貸し傘も「使った日に持ち帰り、翌朝忘れる」——この一点で必ず回収率が落ちます。
返すには「わざわざオフィスまで持ってくる」しかないという設計そのものが原因で、本人に悪気はありません。
補充した傘が使われないまま買い足しが続くのも、同じ構造です。
アイカサの自社調査(2026年2月実施)では、自宅に使える傘があるのにコンビニ等でビニール傘を買った経験がある人が66.8%いました。
傘は「持っていない」から買われるのではなく、「いま手元にない」から買われる。
何本置くかではなく、必要な瞬間に手が届くかどうかが問題だということです。
傘シェアリングが変えるのは、この「返しに行く」前提です。
オフィスで借りた傘は帰宅時に最寄り駅で返せ、朝に駅で借りた傘をオフィスで返すこともできます。
持ち帰りが「失われた1本」ではなく通常利用になり、補充・清掃・放置傘の処分も事業者側へ移ります。
会社に傘を常備する方法を他の選択肢と比較したい場合は傘のレンタルサービス比較——個人向けと法人向けの違いを3軸で整理もあわせてご覧ください。
導入の流れ――パターンとリードタイム

導入パターンとリードタイム
導入パターン | 内容 | リードタイム(最短) |
|---|---|---|
A. 既存スポット利用のみ | 社員が全国の街スポットを会社負担で利用 | 2〜3週間 |
B. オフィス内スポット追加設置 | 執務フロア等に専用スポットを増設 | 3〜4週間 |
オフィス内に設置する場合の設置日は毎月15日・30日です。
「いつから使いたいか」から逆算するのが最短ルートになります。
実務は、問い合わせ・要件整理、プランと設置場所の確定、契約・設置日の確定、設置・社内周知という4ステップで進みます。
AとBの分かれ目は3つ
見るところ | A(既存スポットのみ)向き | B(オフィスに設置)向き |
|---|---|---|
最寄り駅からの距離 | 駅直結・徒歩5分圏 | 徒歩10分以上、または駅と逆方向 |
社員の動き方 | 通勤中心。困りごとが出退勤に集中 | 日中の外出・来客・拠点間移動が多い |
入居形態 | テナント入居で共用部の調整が重い | 自社ビル、または管理会社と調整しやすい |
2つ以上が右側ならBを前提に相談したほうが早く着地します。
判断が割れる場合は、まずAで始めて利用レポートを見てから増設を検討するのが安全です。
使われ方が数字で見えてから判断できるので、社内でも通しやすくなります。
問い合わせ前に用意しておく4つの数字
見積もりも台数提案も、この4点の有無で往復回数が変わります。
用意するもの | 出し方・入手先 |
|---|---|
① 想定利用人数 | 全社員数ではなく「出社人数」。直近3か月の平均出社率をかける(入退館ログ・勤怠システム) |
② フロアの導線 | 出社時に全員が必ず通る場所はどこか(避難経路図が使いやすい) |
③ 設置候補場所の条件 | 置ける面積、共用部か専有部か、管理会社の許可が要るか |
④ 最寄り駅・主要路線 | 社員が多く使う路線に既存スポットがあるか。事業者に聞けば周辺の設置状況が分かる |
特に③は見落とされがちです。
共用部への設置は、契約より先に「ビル管理会社の許可が下りるか」が実際のボトルネックになることが多いため、問い合わせと同時に管理会社へ一報を入れておくとリードタイムが読みやすくなります。
なお必要台数・本数は、フロア構成と出社パターンで大きく変わるため一律の換算値では出せません。
上記の①〜④を渡せば、事業者側から具体的な提案が出てきます。
契約前に確認しておきたい「やめやすさ」の質問
総務が稟議で突っ込まれるのは、始めやすさよりやめやすさです。
料金は企業規模に応じた月額制で条件が変わるため、見積もり段階で次を質問し、回答を稟議書に転記できる形にしておくと差し戻しを防げます。
- 算定基準——社員数・設置台数・利用回数のどれで決まるか。人数が増減したら月額はどう変わるか
- 初期費用——設置工事費・筐体費用は別途か、月額に含まれるか
- 契約期間・最低利用期間——期間の定めはあるか。自動更新か
- 解約条件——何か月前の申し出で解約できるか。撤去費用と原状回復はどちら負担か
- 縮小の可否——想定より使われなかったとき、プラン縮小や減設に応じてもらえるか
- レポート——どの指標が、どの頻度で出るか
- 移転・レイアウト変更時——設置場所を動かすときの費用と手続き
この7項目の回答をもらえば、稟議書の「リスク・撤退条件」欄はほぼ埋まります。
導入後、総務の手元に残るもの・残らないもの

残らない仕事は、筐体の設置、スポットの清掃、利用者からの問い合わせ対応です。
修理も事業者負担のため、「壊れた傘をどうするか」の判断も発生しません。
残るのは数字です。
利用率や利用回数は管理画面・レポートで可視化でき、継続判断のときに「どれだけ使われているか」を示せます。
福利厚生や備品の多くが「入れたあと、効果を聞かれても答えられない」問題を抱えるなかで、使われた証拠が数字として出ることは実務的な武器になります。
来客用の傘の扱いや放置傘の掲示テンプレートについては来客用の傘どうしてる、という記事でも取り上げています。
オフィスの置き傘が抱えている「見えないコスト」についてはオフィスの置き傘問題「本当のコスト」もあわせてご覧ください。
なぜいま会社で傘を常備する企業が増えているのか
冷房の効いたオフィスでのデスクワークが、熱中症対策義務の直接対象になることは基本的にありません。
そのうえで、傘を常備する企業が増えている理由が2つあります。
1つめは、移動時の扱いです。
2025年6月1日に施行された改正労働安全衛生規則(安衛則第612条の2)により、一定の暑熱環境での作業に熱中症対策が義務づけられました。
直接の対象は、WBGT(暑さ指数)28度以上または気温31度以上の場所で、継続して1時間以上または1日4時間を超えて行われる作業です。
重要なのが「場所」の解釈で、厚生労働省の通達は「必ずしも事業場内外の特定の作業場のみを指すものではなく、出張先で作業を行う場合、労働者が移動して複数の場所で作業を行う場合や、作業場所から作業場所への移動時等も含む趣旨であること」と明記しています(厚生労働省労働基準局長通達 基発0520第6号・令和7年5月20日)。
つまり、外回りや複数拠点を回る業務の移動時間は、条件を満たせば対象に含まれ得るということです。
同通達は、対象作業に該当しない場合でも「改正省令に準じた対応を行うよう努めること」としています。
この義務は労働安全衛生法に基づく措置義務であり、対応が不十分な場合は労働基準監督署による指導・是正勧告の対象となり得ます。
2つめは、安全配慮義務です。
労働契約法第5条は、労働者が生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮を使用者に求めています。
規則の直接対象かどうかにかかわらず、通勤・外出時の暑さへの備えは、この観点からも説明のつく対応です。
その具体策として日傘が挙がるのは、環境省が活用を推進しているためです。
同省の資料(2019年5月21日報道発表)では、人工気象室での実験(気温30℃・湿度50%、男性6名が15分間の歩行運動を2回)で、日射を99%以上カットする日傘により汗の量が約17%減ったこと、日向に比べて1〜3℃程度のWBGT低減効果があることが報告されています。
同じ資料では、クールビズ単独の低減効果が約11%なのに対し、日傘を併用すると合計約20%低減できるとされ、「日傘を差す効果は、10m間隔で街路樹を形成する効果に匹敵する」とも書かれています。
服装の工夫だけで暑さ対策を済ませている会社には、まだ上乗せの余地があるということです。
日傘は熱中症を防ぐものではなく熱ストレスを下げる補助的な対策ですが、晴雨兼用の傘を常時使える状態にしておくことは、雨の日の備えと夏の移動時対策を1つの仕組みで満たす一手になります。
よくある質問
Q1. 導入にはどのくらい時間がかかりますか?
A. 既存スポットの利用のみなら最短2〜3週間、オフィス内への追加設置は最短3〜4週間が目安です。
設置日は毎月15日・30日です。
Q2. 置き傘を買うのと比べたメリットは?
A. 補充・清掃・放置傘の処分が総務に残らず、オフィスで借りて駅で返せる点です。
利用状況がレポートで残るため、継続判断にも使えます。
Q3. 社員がアプリを入れなくても使えますか?
A. アプリ不要で使える筐体があります。登録の手間を理由に「使われない施策」になるリスクを抑えられます。
Q4. 料金はいくらですか?
A. 企業規模に応じた月額制です。
金額は規模や設置形態で変わるため、詳細はお問い合わせください。
見積もり時に算定基準・初期費用・契約期間・解約条件をあわせて確認しておくと稟議がスムーズです。
Q5. 何台・何本必要かの目安はありますか?
A. フロア構成・出社率・日中の外出の多さで変わるため一律の換算値では出せません。
想定利用人数・設置候補場所・最寄り駅を伝えれば、具体的な提案を受けられます。
Q6. テナント入居でも設置できますか?
A. 共用部への設置はビル管理会社の許可が前提です。
難しい場合は、専有部への設置か、既存スポットの利用のみで始める方法があります。
アイカサは、"雨の日も晴れの日も快適にハッピーに"、"使い捨て傘をゼロに"をミッションに2018年12月にサービスを開始した、日本初の本格的な傘のシェアリングサービスです。
アプリ会員数は約100万人となり(2026年7月時点)、12都道府県・全国1,000駅以上、合計約2,500か所のスポットに傘を設置しています。
ここまで紹介した仕組みを法人向けに提供しているのが「アイカサOffice」です。
オフィスで借りた傘は帰りに最寄り駅で返せ、専用の傘立てはアプリ登録なしでそのまま使えます。
晴雨兼用のため夏は日傘としても活躍し、補充・メンテナンス・社員からの問い合わせ対応はアイカサ側で対応します。
利用回数・利用者数のレポートも提供されるため、社内報告や継続判断にそのまま使えます。
仕組み全体の詳しい解説はアイカサOfficeの完全ガイドにまとめています。
オフィスの傘の悩みを仕組みで解決するアイカサOfficeが気になった方は、こちらからお問い合わせください。
※『アイカサ』を1回レンタルすることにより、CO2約692gの削減に貢献します。(参照:環境省3R原単位の算出方法より https://www.env.go.jp/press/files/jp/19747.pdf)
※本記事は2026年7月時点の公開情報をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。
法令の解釈・適用や税務上の取扱いは個別の事情により異なる場合があります。
実際の対応にあたっては、所轄の労働基準監督署、社会保険労務士、税理士等の専門家にご確認ください。



