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WBGT値の測り方と記録の残し方|職場の基準値早見表つき

WBGT値の測り方と記録の残し方|職場の基準値早見表つき

2025年6月1日に改正労働安全衛生規則(第612条の2)が施行され、一定の暑熱環境下で作業を行う職場には、熱中症対策の体制整備と手順の策定・周知が罰則付きで義務づけられました。

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WBGT値の測り方と記録の残し方|職場基準値早見表つき

2025年6月1日に改正労働安全衛生規則(第612条の2)が施行され、一定暑熱環境下作業を行う職場には、熱中症対策体制整備手順策定周知罰則付きで義務づけられました。施行からすでに1年以上経過し、労働基準監督署調査取引先からの確認でも「対応済みであること」前提として扱われる段階に入っています。

この義務適用判定する起点になるのが、WBGT(暑さ指数)です。ところが実務では「測り方」よりも先に、もっと基本的問題でつまずく職場が少なくありません。測ってはいるが、記録が残っていない。記録はあるが、誰が・いつ・どこで測ったのか分からない。これでは、いざというときに「把握し、対応していた」ことを示せません。

この記事では、WBGTの基礎基準値早見表に加えて、検索してもほとんど情報が出てこない「記録の残し方」を、テンプレートつきで具体的解説ます。読者として想定しているのは、総務安全衛生のご担当者です。

屋外作業の合間に水分をとる作業員
屋外作業現場設置されたWBGT指数計

WBGTとは|気温と何が違うか

WBGT(Wet-Bulb Globe Temperature:湿球黒球温度)は、熱中症リスク評価するための指標で、「暑さ指数」とも呼ばれます。単位気温と同じ「℃」ですが、中身別物です。

気温が「空気温度」だけを表すのに対し、WBGTは熱中症影響する3つの要素を重みづけして合成した値です。

  • 湿度(汗の蒸発しやすさ)
  • 日射輻射など周囲からの熱
  • 気温

算出式は次のとおりです(厚生労働省職場における熱中症予防基本対策要綱」)。

  • 日射がない場合屋内など): WBGT値 = 0.7 × 自然湿球温度 + 0.3 × 黒球温度
  • 日射がある場合屋外): WBGT値 = 0.7 × 自然湿球温度 + 0.2 × 黒球温度 + 0.1 × 気温乾球温度)

注目すべきは、湿度反映する「自然湿球温度」係数が0.7と、全体の7割を占めることです。人体は汗の蒸発体温を下げるため、湿度が高いと同じ気温でも危険度が大きく上がります。気温30℃でも湿度85%なら、WBGTはおおむね31℃に達し、気温33℃・湿度50%と同等以上リスクになります。今日気温がそれほどでもないから大丈夫」という感覚的判断通用しない理由がここにあります。

義務化判定は「WBGT28℃」と「気温31℃」の二本立

改正労働安全衛生規則にもとづく義務対象は、次の条件を満たす作業です(厚生労働省 基発0520第6号)。

  • WBGT28℃以上 または 気温31℃以上環境下で、
  • 連続1時間以上、または1日4時間を超えて実施見込まれる作業

WBGTと気温のどちらか一方でも該当すれば対象です。WBGTを測定していない職場でも、気温31℃以上であれば義務対象になり得ます。逆に言えば、WBGTを正しく測定記録していれば、「WBGTは28℃未満った」という判定根拠を持てることになります。

WBGT基準値早見表

義務化閾値である28℃とは別に、厚生労働省の「職場における熱中症予防基本対策要綱」には、作業強度別にWBGT基準値一覧表が示されています。この表は、JIS Z 8504(ISO 7243)の基準値をもとに、代謝率レベル具体的作業例に置き換えたものです。

WBGT基準値早見表
WBGT基準値早見表

区分

身体作業強度の例

暑熱順化者基準値

暑熱非順化者基準値

0 安静

安静、楽な座位

33℃

32℃

1 低代謝率

軽い手作業(書く、タイピング、点検、組立て)、時速2.5km以下歩行

30℃

29℃

2 中程度代謝率

くぎ打ち、草むしり、中くらいの重さの材料断続的に持つ作業、時速2.5〜5.5kmの歩行

28℃

26℃

3 高代謝率

重量物運搬、ショベル作業、のこぎり作業、時速5.5〜7kmの歩行

26℃

23℃

4 極高代謝率

激しくシャベルを使う・掘る、階段を昇る、る、時速7km以上歩行

25℃

20℃

出典: 厚生労働省職場における熱中症予防基本対策要綱」表1-1

表を読むうえでのポイントは3つあります。

1. 「暑熱順化」有無基準値が変わる。 暑熱順化者とは「評価期間の少なくとも1週間以前から同様全労働期間、高温作業条件にばく露された人」を指します。梅雨明直後、夏季休暇明け、新規入場者、配置転換直後作業者は「順化していない」前提で、低いほうの基準値適用ます。区分3の作業なら、順化者26℃に対し非順化者は23℃。3℃の差は、実務上は「対策を始める日が2〜3週間早まる」ことを意味ます。

2. 義務化の28℃と、この表の基準値役割が違う。 表の基準値は「超えたら熱中症予防対策徹底べき」という予防管理上目安努力義務運用基準)です。一方の28℃は、罰則付義務適用判定する閾値です。区分2の順化者基準値28℃と数値一致しますが、高強度作業では表の基準値のほうが低くなります。つまり「28℃未満だから何もしなくてよい」わけではなく、区分3〜4の作業では23〜26℃の段階から予防対策が求められます。

3. 服装によって補正必要。 要綱の表1-2には、着衣による補正値が定められています。通常織物製作業服補正0ですが、作業服の上につなぎ服を重ねると+3℃、つなぎ服に不透湿性エプロンを重ねると+4℃、フードなしの単層不透湿つなぎ服は+10℃、フード付きなら+11℃を、測定したWBGT値に加算して基準値比較ます。防護服着用する化学工場解体塗装などの現場では、実測値が26℃でも補正後は36℃相当になり得るということです。

WBGTの測り方

測定器はJIS B 7922適合品黒球付き)を選ぶ

WBGTの測定には、JIS B 7922(電子式湿球黒球温度指数計)適合したWBGT指数計を使います。選定時注意点は1つだけ覚えてください。黒球直径数cmの黒い球体)が付いていない簡易的な「熱中症計」は、JISに適合しておらず、輻射熱を正しく拾えません。 直射日光下や炉・加熱設備のそばでは、実際より低い値が表示されることがあり、判定を誤る原因になります。

測定位置と高さ

測定原則は「作業者実際作業する場所・高さで測る」ことです。

  • 場所: 作業場所うち、最も暑熱条件が厳しくなる代表点。屋内なら熱源に最も近い作業位置、屋外なら日なたの作業位置
  • 高さ: 立位作業なら床上約1.1m、座位作業なら約0.6m(体幹部の高さ)目安(JIS Z 8504)
  • 事務室壁掛温湿度計位置や、日陰に置いた測定器の値で代用しない

測定器設置してから値が安定するまで数分十数分かかる機種が多いため、作業開始前余裕をもって設置ます。

環境省予測値代用できる場面限界

環境省熱中症予防情報サイト(wbgt.env.go.jp)では、全国観測地点ごとに暑さ指数実況値と、当日から先の予測値無料公開されています。これをどこまで使ってよいかは、実務で最も質問の多いポイントです。

使える場面

  • 前日当日朝計画判断(「明日は28℃を超える見込みか」事前確認、作業時間帯変更判断)
  • 屋外作業で、周辺に大きな熱源や照り返しがなく、観測地点条件が近い場合参考値
  • 熱中症警戒アラート(暑さ指数33以上予測される場合発表)把握

限界実測必要場面)

  • 屋内作業場。予測値屋外気象条件にもとづくため、炉・機械排熱換気不足のある屋内とは大きく乖離します
  • アスファルトの照り返しが強い場所、テント内、車両内など局所的に厳しい環境
  • 防護服など着衣補正必要作業補正前提となる実測値が要る)

結論して、環境省予測値は「計画のための事前情報」、現場のWBGT指数計は「当日判定のための実測」と使い分けるのが基本形です。

記録の残し方|何を・誰が・どの頻度

ここからが本題です。WBGTの測定方法測定器説明書にも書いてありますが、記録をどう残すか」体系的説明した資料はほとんどありません。

なぜ記録必要

まず前提正確に押さえます。改正労働安全衛生規則第612条の2が義務づけているのは、熱中症自覚症状がある作業者や、そのおそれのある作業者発見した者が報告するための体制整備周知、症状悪化を防ぐための措置内容手順策定周知、の2点です。WBGTの測定記録そのものを直接義務づける条文ではありません。

それでも記録実務上不可欠のは、次の4つの理由からです。

1. 義務適用判定根拠なる。 対象作業かどうかは「WBGT28℃以上または気温31℃以上」で決まります。記録がなければ、該当非該当をあとから説明できません

2. 措置実施した証拠なる。 万一、熱中症労働災害発生した場合、労働基準監督署調査では「暑熱環境把握していたか」把握したうえでどんな措置をとったか」確認されます。記録は、策定した手順実際運用されていたことを示す最も直接的材料です

3. 安全配慮義務観点。 民事上も、事業者環境把握合理的対応をしていたかが争点になり得ます

4. 改善データなる。 時間帯別場所別記録蓄積されると、「この作業場は13時台基準値を超えやすい」といった傾向がつかめ、作業時間前倒しやスポットクーラー設置判断材料になります

何を記録するか(8項目)

1つの測定つき、次の8項目を残せば十分です。

1. 測定日時

2. 測定場所作業場所名。複数ある場合地点ごと)

3. 測定者名

4. WBGT値(℃)

5. 気温湿度測定器表示されるものをそのまま)

6. 作業内容着衣条件強度区分と、補正必要服装かどうか)

7. 判定基準値・28℃との比較。超過/接近/問題なし」など3段階十分)

8. 講じた措置休憩頻度変更、作業時間短縮、作業中断、体調不良者有無対応など。なければ「なし」と書く)

ポイントは、7と8を必ずセットにすることです。数値だけが並んだ記録は「測っただけ」証明にしかなりません。超過認識し、こう対応した」まで書かれて初めて、手順機能していた記録になります。

記録頻度

  • 夏季(おおむね6〜9月)は、対象になり得る作業がある日は毎日
  • 1日のうち、作業開始前+気温が上がる時間帯定点で2〜3回(例: 8時・11時・14時)
  • 基準値を超えた日、熱中症警戒アラート発表日測定間隔を詰める(1時間ごとなど)
  • 屋内空調管理された職場は、毎日測定までは不要。外気温が高い日にスポット的に確認する運用で足ります

残し方は3パターン|紙・表計算自動記録

記録方法3パターンの比較表
記録方法3パターン比較表

パターン1: 紙の記録用紙

朝礼ボード休憩所用紙掲示し、測定のたびに手書きする方式です。小規模現場や、PCを開かない職種ではこれが最も確実です。弱点は、集計保管属人化しやすいこと。月末用紙スマートフォン撮影してクラウド保存する、だけでも紛失リスクは大きく減ります。

パターン2: 表計算(Googleスプレッドシート等)

テンプレートを1枚作り、日付ごとに行を追加していく方式です。複数拠点記録を1つのファイル集約でき、グラフ化も容易です。現場からはスマートフォン入力できるようにフォーム(Googleフォーム等)を入口にすると、入力率が上がります。弱点入力忘れ。「誰が・何時入力るか」当番として決めておかないと、8月の途中空白が続きがちです。

パターン3: 自動記録クラウド接続型のWBGT計・センサー)

測定器自動クラウドにログを送り、閾値超過時にはメールチャット通知が飛ぶ方式です。常時ログが残るため記録漏れが構造的発生せず、多拠点製造業倉庫業に向きます。初期費用通信費がかかるため、まず1拠点で試してから広げるのが現実的です。この場合も、通知を受けて何をしたか」措置記録)は人が書き残す必要がある点は変わりません。

記録テンプレート

そのまま使える形式を示します。表計算転記すればテンプレートとして機能ます。

日付

時刻

場所

WBGT(℃)

気温(℃)

湿度(%)

作業内容/服装

判定

措置

記入者

8/18

8:00

資材置場

26.5

29.0

70

荷下ろし/作業服

接近

休憩所氷補充

佐藤

8/18

11:00

資材置場

29.0

32.5

65

荷下ろし/作業服

超過

休憩15分→20分に延長、ペア作業変更

佐藤

8/18

14:00

資材置場

30.5

33.0

60

荷下ろし/作業服

超過

屋外作業を15時まで中断

田中

保存期間について法令上の定めはありませんが、労働安全衛生規則では多くの記録に3年間保存が定められていることにならい、最低3年、可能なら5年の保存をおすすめします。表計算自動記録なら保存コスト実質ゼロです。

基準値を超えたときの判断フロー

記録の「措置」欄に書く中身、つまり超過時に何をするかを、あらかじめ決めておきます。要綱が挙げる対策をもとにした基本フローは次のとおりです。

WBGT超過時の判断フロー図
WBGT超過時判断フロー

事前前日当日朝)

  • 環境省予測値で28℃超えが見込まれる場合、作業時間帯前倒し・作業計画変更検討
  • 非順化者新規入場者・休み明け)がいないか確認し、いる場合作業強度時間を抑える

当日、基準値または28℃を超えたら

1. 冷房送風・遮へいなどでWBGT値そのものを下げられないか検討する

2. 下げられない場合、作業強度の低い作業への変更、より涼しい場所への作業変更、休憩頻度の引き上げ、連続作業時間短縮を行う

3. 単独作業を避け、巡視頻度を上げる。水分塩分摂取作業前後作業中確認する

体調異変が起きたら(義務化された手順中核)

1. 発見者本人は、あらかじめ周知された連絡先担当者)即報告する

2. 意識ない、呼びかけへの反応がおかしい場合は、ためらわず救急要請。その場に一人にしない

3. 意識がある場合も、涼しい場所へ移し、衣服を緩めて体を冷やし、水分自力で摂れるか確認する。摂れなければ医療機関

4. 対応経過時刻とともに記録する

この一連の流れを1枚の手順書にして掲示周知しておくことが、まさに改正省令が求める「実施手順策定周知」に当たります。

オフィス企業場合外出移動時の考え方

空調の効いたオフィスでの執務は、通常WBGT28℃に達しないため、義務対象になる場面はまれです。だし、営業外回り、現場店舗への巡回、屋外イベントへの出展、通勤時間帯の駅までの移動など、屋外にいる時間」オフィス企業にも必ずあります。連続1時間以上屋外移動屋外業務見込まれる日は、環境省予測値朝礼チャット共有し、移動時間帯調整訪問件数見直しを行うのが現実的対応です。

屋外移動対策として意外効果が大きいのが日傘です。環境省が2019年に発表した実証実験では、帽子のみの場合と比べて、日射を遮る日傘遮光率99%以上)使用歩行時の汗の量が約17%減少しました。

また、日傘木陰などで日射を遮ると、日なたと比べてWBGT値が1〜3℃程度下がることも環境省測定確認されています。発表から年数は経っていますが、環境省現在熱中症対策として日傘活用推奨しています。

先ほどの早見表で見たとおり、WBGTの1〜3℃は基準値区分1つ分に相当する差です。

とはいえ、日傘社員それぞれの個人購入に任せると、持ってこない日には使えず、対策として定着しにくいのが実情です。この点、傘シェアリングの「アイカサ」のように、オフィス店舗出入口晴雨兼用傘共用の置き傘として法人導入する方法なら、個人の持ち物に依存せず、外出のたびに誰でも使える状態仕組みとして維持できます。

よくある質問

Q1. WBGTの測定法律上義務ですか?

測定そのものを直接義務づける規定はありません。だし、義務対象作業かどうかの判定(WBGT28℃以上または気温31℃以上)と、超過時措置前提して、実務上測定必要になります。気温31℃だけで判定する運用可能すが、湿度の高い日はWBGTのほうが先に閾値へ達するため、WBGTでの管理安全側です。

Q2. 測定器はどれを選べばよいですか?

JIS B 7922に適合した、黒球付きのWBGT指数計を選んでください。黒球のない簡易型輻射熱を測れず、屋外熱源近くで実際より低い値が出ることがあります。

Q3. 環境省の暑さ指数だけで済ませてよいですか?

事前計画判断には十分使ます。ただし屋内作業場や、照り返し・熱源のある場所では実測との乖離が大きいため、現場での実測原則にしてください。

Q4. 記録労働基準監督署提出するのですか?

定期的提出義務はありません。だし、監督署調査臨検)労働災害発生時調査では、暑熱環境把握状況措置実施状況確認されます。その場で示せる状態にしておくことが記録目的です。

Q5. 罰則はありますか?

改正労働安全衛生規則第612条の2にもとづく義務報告体制整備周知、重篤化防止措置手順策定周知)違反した場合、6か月以下拘禁刑または50万円以下罰金対象になり得ます(労働安全衛生法第119条)。

Q6. なぜここまで対策重視されているのですか?

厚生労働省確定値によると、令和7年(2025年)の職場における熱中症による死傷者は1,803人と、統計を取り始めた2005年以降最多記録した一方、死亡者は19人と前年から約39%減少しました。

猛暑発生件数自体は増えたにもかかわらず死亡が減った背景して、義務化により早期発見重篤化防止体制機能したことが挙げられています。報告体制手順、そしてそれを支える測定記録は、実際に命を守る効果数字に表れている対策だということです。

まとめ

  • WBGTは湿度を7割の重みで反映した指標。気温だけの判断では危険見逃
  • 義務化判定は「WBGT28℃以上または気温31℃以上」+「連続1時間以上または1日4時間超」
  • 基準値早見表作業強度順化有無で23〜33℃まで幅がある。服装による補正も忘れない
  • 測定はJIS B 7922適合黒球付きの測定器で、作業者位置・高さで行う
  • 記録は8項目・1日2〜3回。「判定」と「措置」セットで残すことが核心
  • 超過時フロー体調異変時手順を1枚にまとめ、周知する。それ自体義務への対応になる

って、記録して、記録にもとづいて動く。この3点が回っていれば、義務対応としても、実際労働者安全確保としても、大きく外すことはありません。まずは今週、測定器設置場所記録テンプレートを決めるところから始めてみてください。

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アイカサ編集部
監修:アイカサ編集部(傘シェアリングサービスの運営チーム)

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