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真夏の14時、直射日光の中を客先まで徒歩12分。日傘が効くと知っている営業職の社員が、それでもさしていない——そんな光景に心当たりはありませんか。この記事では、男性が日傘を使わない本当の理由と、会社の傘立てひとつでそれがどう変わるかを、総務の実務目線で整理します。
- 男性が日傘を使わない3つの障壁と、環境省の実験データ
- 移動時の暑さ対策が、法令上もオフィス企業の課題である理由
- 会社の傘立てで障壁を下げる考え方
日傘男子になれない3つの障壁

障壁 | 中身 |
|---|---|
①買う | 自分でわざわざ買いに行く、選ぶ手間 |
②持ち歩く | 毎日カバンに入れて持ち運ぶ負担 |
③浮かないか | 職場・客先で自分だけ日傘をさすことへの気後れ |
「そのうち」で後回しになり結局暑い日を素手で越えてしまう、荷物になると分かっていて常に持つのは続かない、「男が日傘?」と見られないか気になる——この3つが重なって、いちばん暑さにさらされる人ほど使わない、というねじれが起きます。
社内提案でいちばん効くのは「効果は公的機関が測っている」という事実です。環境省の報道発表「日傘の活用推進について」(2019年5月21日)には、日射を99%以上カットする日傘を使うと汗の量が約17%減り、日向に比べてWBGT(暑さ指数。気温・湿度・日射などをまとめた指標)を1〜3℃程度低減する効果があると示されています。クールビズ単独では約11%の熱ストレス低減ですが、日傘を併用すると合計約20%まで下がります。「街路樹1本分を持ち歩いている」——日傘を差す効果は10m間隔で街路樹を形成する効果に匹敵するとも紹介されており、社内説明でそのまま使える表現です。ただしこれは人工気象室での実験(気温30℃・湿度50%・日射量1.2kW/㎡・風速0.5m/s、15分間の歩行運動を2回、男性6名対象)の結果であり、日傘は熱中症を防ぐものではなく、水分補給や休憩と組み合わせる補助的な対策として位置づけてください。
なぜ「会社にある」が3つの障壁を全部消すのか

3つの障壁は、会社の傘立てに晴雨兼用の傘が常備されているという一つの状態で、まとめて下がります。買う障壁は、傘立てから1本取るだけに変わります。持ち歩く障壁は、外出時に取って外出先や最寄り駅で返せる形にすれば、使う日だけ手に取る動作に変わります。そして浮かないかという気後れがいちばん大きく変わります。私物の日傘は「あの人だけ」に見えますが、傘立ての共用傘は「みんなが使う会社の備品」です。前例が一つできれば、次からの気後れは薄れていきます。
移動時の暑さ対策は、会社側の実務課題でもあります。2025年6月1日、改正労働安全衛生規則(令和7年厚生労働省令第57号)が施行され、一定の暑熱環境で働く人を抱える会社に熱中症対策が義務づけられました。対象は、暑さ指数(WBGT)28度以上または気温31度以上の場所で、継続して1時間以上または1日4時間を超えて行われることが見込まれる作業です。厚生労働省の通達は、この「暑熱な場所」について「必ずしも事業場内外の特定の作業場のみを指すものではなく、出張先で作業を行う場合、労働者が移動して複数の場所で作業を行う場合や、作業場所から作業場所への移動時等も含む趣旨であること」と明記しています。条件次第では、外回りの多いオフィス企業も対象になり得るということです。対象外でも、同通達は改正省令に準じた対応に努めるよう求めており、移動時の対策を用意しておくことは会社にとって一つの備えになります。
傘立てを機能させるコツ

「日傘を置く」以前に、そもそも傘立てがうまく機能していない職場は少なくありません。共用は色や柄を1種類に統一すると、差込口に収まらず倒れるといったことが起きにくくなります。濡れた傘の置き場をあらかじめ決めておくと、床が濡れて乾いた傘と混ざる状態を避けられます。何より効くのは、私物と共用を物理的に分けることです。混ざっている限り、在庫を数えることも、持ち主不明の傘を整理することもできません。共用は色やタグで一目で識別できるようにし、傘立てを「置き場」ではなく「貸出棚」として位置づけ直すと、運用の筋が通ります。
何本用意すればいいか
社員数から発想すると必ず多すぎます。使うのは同じ時間帯に外に出ている人だけです。目安は、日中に外出する社員数にピーク時の同時外出率をかけた人数に、予備を足した本数です。従業員300人でも、日中に社外へ出るのが80人、そのうちピーク時に同時に外に出ているのが3割なら、20〜25本前後が起点になります。300本ではありません。最初から人数分そろえず、朝の時間帯に空になるようなら少しずつ足し、常に余っているようなら本数ではなく置き場所や周知の仕方を見直すのがおすすめです。
データで見る男性と日傘のいま
まず現在地を数字で押さえます。メンズリゼが2025年4月に実施した調査(10〜40代男性600名)から、3つの数字を引用します(出典: メンズリゼ調べ・2025年)。
肯定は9割弱、もはや多数派
男性の日傘使用に肯定的な回答は87.4%。年代別でも10代91.4%、20代82.0%、30代85.4%、40代90.7%と、どの年代でも8割を超えています。「若者だけの感覚」ではなく、40代がむしろ最も肯定的という点は注目に値します。
実使用は17.8%──ただし2年で2倍以上
一方、実際に日傘を使っている男性は17.8%。まだ6人に1人です。ただし推移を見ると、2023年8.0%→2024年13.5%→2025年17.8%と、2年間で2倍以上に増えています。使用中と使用意向を合わせた「ポジティブ層」は81.8%に達し、2023年の60.3%から20ポイント以上伸びました。
数字が示す構図
整理すると、こうなります。
指標 | 数値(2025年) | 推移 |
|---|---|---|
男性の日傘使用に肯定的 | 87.4% | 全年代で8割超 |
実際に使用している | 17.8% | 2023年8.0%→2025年17.8% |
ポジティブ層(使用中+意向あり) | 81.8% | 2023年60.3%→2025年81.8% |
つまり、「使ってもいいと思っているが、持っていない」層が極めて厚い。世論の壁はすでに崩れていて、残っているのは「買う・持ち歩く」という行動のハードルだけ、というのが2025年時点の構図です。ここに、個人の購買ではなく会社の備品というアプローチが刺さる余地があります。

導入すると何が変わるか
会社備品としての日傘がもたらす変化を、3つの側面で整理します。
①外勤者の熱中症リスク低減──義務化対応の一手として
2025年6月1日施行の改正労働安全衛生規則により、WBGT28以上または気温31℃以上の環境での一定時間の作業について、熱中症の兆候を早期把握する体制整備・重篤化を防ぐ手順作成・周知が罰則付きで義務化されました(厚生労働省)。営業の外回りや現場間の移動は、この対象になり得ます。
日傘の常備は、この文脈では「外勤者への日射対策の提供」という体制整備の一部になります。WBGTを1〜3℃下げる手段を会社が提供している、という事実は、安全配慮の取り組みとして説明可能なものです。もちろん日傘だけで義務化対応が完了するわけではありませんが、水分補給・休憩ルール・体調確認と並ぶ、目に見える対策の1つになります。
②「会社が認めた」というシグナル効果
備品化の効果は物理的な日陰にとどまりません。玄関に日傘が並んでいる状態は、「この会社では日傘を使うのが普通」という宣言として機能します。
1章のギャップを思い出してください。使わない理由の多くは「反対だから」ではなく「きっかけがないから」です。会社が置く。上司が使う。1人が使い始める。この連鎖のスターターとして、備品の日傘は個人への呼びかけよりはるかに強く働きます。
③採用広報・対外発信の材料
熱中症対策の義務化を受けて、従業員の暑さ対策は企業の姿勢が表れるテーマになりました。「外勤者向けに日傘を常備しています」という取り組みは、健康経営や働きやすさの文脈で対外的に発信しやすい、具体性のある施策です。特に外勤の多い業種では、求職者への訴求材料にもなります。
導入の実務──本数・置き場・運用ルール・告知文例
何本・どこに置くか
全従業員数ではなく、「外出する人数×ピーク時の同時外出率」で見積もるのが実務的です。
- 例: 従業員100人・外勤者30人・ピーク時に同時外出する割合が半分程度 → 15本前後が起点
- 置き場所は玄関・エレベーターホールなど「外に出る動線上」の1か所に集約。分散させると在庫が見えなくなる
- 雨傘と混ざらないよう、日傘(晴雨兼用)専用の区画を作るか、色・タグで見分けられるようにする
運用ルールは3行で足りる
複雑なルールは使われなくなります。掲示するのは次の3行程度で十分です。
1. 外出時、自由に持ち出してOK(申請不要)
2. 戻ったら傘立てへ返却
3. 置き忘れ・破損は総務へ一報(責めません)
「申請不要」を明記するのがポイントです。借りるのに手続きが要ると、心理的コストが復活します。
社内告知の文例
そのまま使える告知文を置いておきます。
> 件名: 共用の日傘を設置しました(外出時にご自由にどうぞ)
>
> 総務部です。熱中症対策の一環として、1階エントランスに共用の日傘(晴雨兼用)を設置しました。
>
> 環境省の実証では、日傘の使用で汗の量が約17%減るという結果が出ています。外回り・ランチ・移動など、日差しの強い日はどなたでも自由にお使いください。申請は不要です。使い終わったら傘立てに戻すだけでOKです。
>
> 性別を問わず、全社員に向けた備品です。「日傘は初めて」という方こそ、一度試してみてください。
最後の一文のように、特定の層に向けた備品ではないことを明示するのが告知のコツです。「男性も使ってよい」とわざわざ書くより、「全員の備品」として扱うほうが、結果的に誰にとっても使いやすくなります。
費用の考え方──買い切りとレンタル型
導入形態は大きく2つあります。それぞれの費用構造を事実ベースで整理します(金額は製品・契約により幅があるため、ここでは構造の違いに絞ります)。
買い切り(備品購入)
- 初期費用: 本数分の購入費。晴雨兼用傘の価格帯は幅広い
- 継続費用: 紛失・破損時の買い替え、シーズンオフの保管場所
- 管理負担: 本数管理・修理判断・廃棄を総務が担う。共用備品は「誰のものでもない」ため、傷みや紛失が個人物より進みやすい点は織り込んでおく必要がある
- 小規模・試験導入には向く。数本から始めて利用状況を見る、という段階的な進め方がしやすい
レンタル型(傘のシェアリングサービス)
- 費用構造: 月額等の利用料に、傘の提供・補充・メンテナンスが含まれる形が一般的
- 管理負担: 紛失・破損時の補充や本数管理をサービス側が担うため、総務の運用負荷が小さい
- 日傘については、アイカサが2025年夏から晴雨兼用・UVカットの折りたたみ日傘「アイカサmini」のシェアリングを国内で初めて開始しています(アイカサ発表・2025年7月)。都内主要駅の約150か所・3,000本から始まり、東京メトロ全171駅へ順次展開予定です
- オフィス向けプランでは、約48cm四方・工事不要の傘立てを設置し、従業員は無料で傘を利用できます。借りた傘は駅やコンビニなど全国1,000駅以上・合計約2,500か所(2026年7月時点)で返却できるため、「直行直帰で持ち出したまま」でも成立するのが備品購入との大きな違いです
どちらが適するかは、外勤者の人数、直行直帰の頻度、総務の管理リソースによって変わります。持ち出した傘がオフィスに戻ってこないと成立しない買い切り型に対し、外で返せるレンタル型は外勤中心の組織に向く──という構造の違いを踏まえて選ぶのが良いでしょう。
社内を通すとき、想定される質問と答え
導入の稟議や会議で実際に出やすい質問を3つ挙げ、本記事のデータで答えられる形にしておきます。
「使う人、いるの?」
→ 肯定87.4%・ポジティブ層81.8%というデータがあります(メンズリゼ調べ・2025年)。使われない最大の理由は「反対だから」ではなく「手元にないから」で、備品化はまさにそこに効きます。心配なら試験導入で利用率を測ってから広げれば足ります。
「日傘って効果あるの? 気休めでは?」
→ 環境省の実証で汗の量約17%減・WBGT1〜3℃低減という公的データがあります(環境省・2019年)。感覚論ではなく、熱中症対策義務化(2025年6月)への対応として説明できる施策です。
「男性向けに導入、って打ち出して大丈夫?」
→ 「男性向け」とは打ち出しません。日傘の効果に性別は関係なく、備品は全従業員向けです。結果として、これまで使うきっかけのなかった層(データ上は男性に多い)に最も効く、という順序で説明するのが正確です。
進め方の目安
1. 試験導入(1シーズン): 外勤の多い1拠点・1部署に数本〜十数本。持ち出し状況を月1回だけ記録
2. 利用実績で判断: 「週あたり持ち出し回数」が見えれば、本数の過不足も本導入の稟議材料もそろう
3. 本導入: 拠点展開。買い切りかレンタル型かは6章の構造比較で、自社の直行直帰の頻度と管理リソースから選ぶ
夏が来てから稟議を書くと設置は盛夏に間に合いません。逆算すると、動き始めは春先がベストです。
オフィスの傘の悩みを、仕組みで解決する「アイカサOffice」
3つの障壁と、傘立ての管理をまとめて外に出す方法として、傘のシェアリングという選択肢があります。アイカサは、"雨の日も晴れの日も快適にハッピーに"、"使い捨て傘をゼロに"をミッションに2018年12月に開始した、日本初の本格的な傘のシェアリングサービスです。アプリ会員数は約100万人(2026年7月時点)、12都道府県・全国1,000駅以上、合計約2,500か所のスポットに傘を設置しています。
法人向けの「アイカサOffice」は、この仕組みをオフィスに持ち込むサービスです。
- オフィスで借りた傘を帰りに最寄り駅で返せるため、持ち帰ったまま戻らないということが起きにくくなります。
- 1種類の晴雨兼用傘が専用ラックに並ぶため、サイズも柄も揃い、持ち主不明の傘が沈殿しません。
- 専用の傘立てはアプリ登録なしでそのまま使えます。
- 補充・メンテナンス・社員からの問い合わせ対応はアイカサが行います。
- 利用回数・利用者数のレポートを提供するため、継続の判断材料が手元に残ります。
専用傘は使い捨てにせず、修理しながら長く使い続けます。料金は企業規模に応じた月額制です。従業員数・拠点数・外出する社員のおよその人数をお伝えいただければ、御社規模での見積もりをご案内します。
アイカサを1回レンタルすることにより、CO2約692gの削減に貢献します。(参照:環境省3R原単位の算出方法より)
よくある質問
Q1. 男性が日傘を使わないのはなぜですか?
A. 効果を知らないからではなく、わざわざ買う、毎日持ち歩く、職場や客先で浮かないか、という3つの行動の障壁が理由です。
Q2. 300人規模のオフィスなら傘は何本用意すればよいですか?
A. 社員数ではなく、日中に外出する社員数とピーク時の同時外出率で考えます。300人でも日中外出する層が80人、ピーク同時外出が3割なら20〜25本程度が起点です。朝に空になるかどうかを見て増減させます。
Q3. 会社の傘立てが散らかるのはなぜですか?
A. サイズや柄がバラバラで収まらない、濡れた傘の置き場が決まっていない、私物と共用が混在して持ち主不明の傘が沈殿する、といったことが主な原因です。私物と共用を物理的に分け、共用は1種類に統一すると解消しやすくなります。
Q4. 会社で日傘を用意するのにどのくらい費用がかかりますか?
A. 周知や運用ルールの整備は費用をかけずに始められます。傘そのものは自社で購入するほか、傘・日傘のシェアリングを使う方法もあり、その場合は企業規模に応じた月額制です。比較の際は傘の単価だけでなく、年間の補充本数と総務の対応時間もあわせて見るのがおすすめです。
Q5. オフィス中心の会社も、熱中症対策義務化の対象ですか?
A. 暑さ指数や時間の条件次第では対象になる可能性があります。厚生労働省の通達は、作業場所から作業場所への移動時等も含む趣旨だと明記しています。対象外の場合でも、同通達は改正省令に準じた対応に努めるよう求めています。個別の判断は所轄の労働基準監督署や社会保険労務士にご確認ください。
Q6. 雨傘と日傘は分けて用意する必要がありますか?
A. 晴雨兼用の傘であれば1本で兼ねられます。分けると在庫も管理も二重になりやすくなります。
まずは、傘立てに晴雨兼用の傘を1本置き、「さしていい」と一言添えるところから始めてみてください。それだけで、3つの障壁のうち2つはすぐに下がります。
出典・参考: 環境省「日傘の活用推進について」(2019年5月21日報道発表)/厚生労働省「職場における熱中症対策(改正労働安全衛生規則・基発0520第6号)」/環境省「熱中症予防情報サイト」
※本記事は2026年7月時点の公開情報をもとに、一般的な情報提供を目的として作成したものです。法令の解釈・適用や税務上の取扱いは個別の事情により異なる場合があります。実際の対応にあたっては、所轄の労働基準監督署、社会保険労務士等の専門家にご確認ください。記事中で引用した出典元の資料もあわせてご参照ください。
