目次目次を開く ⌄目次を閉じる ⌃
健康経営優良法人2027の認定を取るまで|要件と、申請月からの逆算スケジュール
「健康経営優良法人、うちも取ろう」と経営者が言い出したとき、担当者が最初にぶつかるのは「で、何から始めればいいのか」です。
結論から言うと、健康経営優良法人の認定でいちばん重要なのは時間の逆算です。健康経営優良法人2027の申請受付は2026年8月17日に始まっており、中小規模法人部門の締切は2026年10月16日。そして申請書(認定申請書)で問われるのは「これからやること」ではなく、すでに実施した取り組みの実績です。つまり、申請月に慌てて何かを始めても間に合わない設計になっています。
この記事では、制度の全体像と認定要件の構造を押さえたうえで、「申請月から逆算していつ何を仕込むか」のスケジュールと、評価項目ごとに低コストで適合させる施策のマッピング表を提供します。主軸は中小規模法人部門です。

1. 健康経営優良法人とは
そもそも「健康経営」とは、従業員の健康保持・増進の取り組みを"コスト"ではなく"投資"と捉え、経営的な視点から戦略的に実践することを指す考え方です。
労働力人口が減り続けるなかで、従業員の不調による生産性低下(出勤していても本調子でない状態は「プレゼンティーズム」と呼ばれます)や休職・離職は、企業にとって無視できない経営リスクになりました。
健康への投資が従業員の活力と組織の生産性を高め、業績と企業価値の向上につながる — これが健康経営の基本的な考え方で、経済産業省が普及を推進しています。
健康経営優良法人認定制度は、この健康経営に取り組む法人のうち、特に優良な取り組みを実践している法人を「見える化」して顕彰する制度です。
項目 | 内容 |
|---|---|
制度設計 | 経済産業省 |
認定主体 | 日本健康会議 |
認定事務局 | 日本経済新聞社(申請ポータル「ACTION!健康経営」を運営) |
認定サイクル | 年1回(毎年夏〜秋に申請、翌年3月に認定発表) |
有効期間 | 認定から1年間(継続には毎年の申請が必要) |
部門は2つ、上位認定もある
部門 | 対象 | 上位認定 |
|---|---|---|
大規模法人部門 | 大企業等(業種ごとの従業員数基準あり) | ホワイト500(上位500法人) |
中小規模法人部門 | 中小企業等 | ブライト500(上位500法人)ほか、上位層の顕彰枠あり |
どちらの部門に該当するかは業種別の従業員数・資本金基準で決まります。自社がどちらか微妙な場合は、申請ポータルの部門判定基準を最初に確認してください。
なぜいま取る企業が増えているのか
認定法人数は年々増え続け、中小規模法人部門は全国で1万法人を超える規模に達しています(認定数は年度ごとに公表されるため、最新の数はACTION!健康経営ポータルでご確認ください)。「レアな称号」から「取っていて当たり前の入場券」に近づきつつある — 採用競争のなかで中小企業がこの認定を目指す背景には、この構造変化があります。
2. 認定要件の全体像 — 5つの大項目
認定要件は、部門を問わず次の5つの大項目で構成されています。
1. 経営理念・方針: 健康経営に取り組むことを社内外に明文化しているか(中小規模法人部門では「健康宣言」への参加が入口)
2. 組織体制: 健康づくり担当者の設置など、推進する体制があるか
3. 制度・施策実行: 健康課題の把握と、それに対応する具体的な施策を実行しているか(評価項目群から一定数以上の適合が必要)
4. 評価・改善: 取り組みの効果を検証し、改善につなげているか
5. 法令遵守・リスクマネジメント: 労働安全衛生法等の法令を守っているか(誓約)
1の「経営理念・方針」は、中小規模法人部門では保険者の健康宣言事業への参加が該当します。協会けんぽの各支部や健康保険組合が「健康宣言」「健康企業宣言」といった名称で実施しており、参加自体は書類1枚程度で完了します。ハードルは低いのに申請の前提条件なので、未参加ならここから始めてください。
2の「組織体制」は、健康づくり担当者を決めることが中心です。専任である必要はなく、総務・人事の担当者の兼任で構いません。誰が旗を振るかを決め、経営者がそれを任命した事実を残すことがポイントです。
4の「評価・改善」は、施策のやりっぱなしを防ぐ仕組みがあるかを見ています。年1回、健診受診率や施策の参加率を前年と比較して振り返る場(経営会議への報告でも衛生委員会でも可)を設ければ対応できます。
5の「法令遵守・リスクマネジメント」は誓約ベースですが、虚偽があれば認定取消の対象です。労働基準法・労働安全衛生法の重大な違反(送検等)がないことが前提になります。
このうち実務の作業量が最も大きいのが3の「制度・施策実行」です。中小規模法人部門では、「健康課題の把握」「ヘルスリテラシーの向上」「ワークライフバランス」「職場の活性化」「保健指導」「食生活の改善」「運動機会の増進」「受動喫煙対策」「病気の治療と仕事の両立支援」といったテーマ別の評価項目が並び、必須項目に加えて選択項目から一定数以上に適合していることが求められます。
重要な注意: 評価項目の具体的な構成・選択必要数は認定年度ごとに見直されます。本記事執筆時点(2026年8月)で健康経営優良法人2027の認定要件の詳細資料は確認中のため、申請前に必ず公式ポータル「ACTION!健康経営」の最新版の認定要件・申請要領を確認してください。以下の逆算スケジュールと施策マッピングは、要件の基本構造(近年維持されている枠組み)を前提にしています。
3. 逆算スケジュール — 申請月から巻き戻して考える
まず確定情報から(健康経営優良法人2027)
項目 | 日程・金額 |
|---|---|
申請受付 | 大規模法人部門: 2026年8月17日〜10月9日(17時締切)/中小規模法人部門: 2026年8月17日〜10月16日 |
申請料 | 中小規模法人部門: 15,000円(税込16,500円)/件、大規模法人部門: 80,000円(税込88,000円)/件 |
請求書送付 | 2026年11月上旬頃 |
認定内定 | 2027年2月下旬頃 |
認定発表 | 2027年3月 |
出典: ACTION!健康経営 申請案内ページ(2026年8月時点)
逆算で見る「本当の着手時期」
認定申請書では、施策の実施実績を問われます。健診受診率のような数字は年度単位で積み上がるものなので、申請年の春には施策が動いている必要があります。逆算すると次のようになります。

時期 | やること | ポイント |
|---|---|---|
前年度〜4月 | ①健康宣言に参加する ②健康づくり担当者を決める | 中小規模法人部門は、協会けんぽ等の保険者が実施する「健康宣言」事業への参加が申請の前提。ここがすべての入口 |
4〜5月 | ③自社の健康課題を把握する(健診結果・残業・休職データの棚卸し) ④年間の施策計画を立てる | 「課題把握→施策」の対応関係が申請書の背骨になる |
5〜7月 | ⑤施策を実行し、記録を残す(実施日・参加者数・案内文書) | 申請書で問われるのは実績。「やったが記録がない」が最頻出の失敗 |
6〜8月 | ⑥定期健診の受診率を100%に近づける(未受診者フォロー) | 健診受診率は多くの項目の土台。夏までに追い込む |
8月中旬 | ⑦申請受付開始。申請書(調査票)の下書きを始める | 設問を先に読み、足りない取り組みを特定する |
9月〜10月中旬 | ⑧不足項目の駆け込み実施(セミナー開催・規程整備など短期で可能なもの)+申請提出 | 締切は10月16日(2027年版・中小規模)。余裕を持って1週間前提出を目標に |
11月 | ⑨申請料の支払い(請求書送付は11月上旬頃) | — |
2月下旬 | ⑩内定通知 | — |
3月 | ⑪認定発表。ロゴ使用開始、採用・広報への展開 | 認定は1年ごとに更新申請が必要。翌年度の計画へ |
「今からでも間に合うか」の判定
この記事を申請受付期間中に読んでいる場合の目安です。
- 健康宣言に参加済み+健診受診率が高い → 間に合う可能性が高い。申請書の設問を読み、不足項目を短期施策で埋める
- 健康宣言に未参加 → まず保険者(協会けんぽ等)の健康宣言事業に今すぐ申し込む。宣言後の申請可否は保険者・事務局の運用によるため、締切との関係を申請ポータルで確認
- 健診受診率が低い(実績が作れていない) → 今年は「来年度申請の準備年」と割り切り、上記スケジュールを来期の4月から回すのが現実的
4. 評価項目別・適合させる施策マッピング
「評価項目の言葉が抽象的で、何をすれば適合なのかわからない」 — これが申請書を前にした担当者の共通の悩みです。テーマ別に、低コストで実行しやすい施策例をマッピングします。
※項目名は近年の中小規模法人部門の評価テーマを一般化した表現です。適合の可否は申請年度の認定要件と事務局の判断によります。必ず最新の申請要領と突き合わせてください。
評価テーマ | 低コストな施策例 | 実務メモ |
|---|---|---|
健康課題の把握 | 健診結果の集計表を作る/ストレスチェック集団分析の確認/簡易な健康アンケート | 「数字で把握している」状態を作るのが第一歩 |
健診受診率の向上 | 未受診者への個別声かけ/就業時間内の受診を認める/受診日を業務カレンダーに組み込む | 受診率は多くの申請設問の土台になる |
再検査・保健指導 | 有所見者への再検査勧奨文書/保険者の特定保健指導の利用勧奨 | 保険者(協会けんぽ)のサービスを使えばコストほぼゼロ |
ヘルスリテラシー向上 | 保険者や自治体の無料健康セミナー活用/社内報・朝礼での健康情報発信 | 実施日と参加者の記録を残す |
ワークライフバランス | ノー残業デー/有給取得の計画的付与/勤怠データの月次レビュー | 既存の取り組みを「制度として明文化」するだけで前進する |
職場の活性化 | 部署横断ランチ・社内イベント/サンクスカード | 実施記録+写真があると申請書が書きやすい |
食生活の改善 | 置き型社食・健康的な間食の提供/飲料の見直し/食生活セミナー | 食事補助の非課税枠(2026年4月から月7,500円・税抜)も追い風 |
運動機会の増進 | 階段利用の推奨掲示/ウォーキングイベント/ラジオ体操/ジム法人契約 | 「継続的な仕組み」になっているかが問われやすい |
受動喫煙対策 | 屋内原則禁煙の徹底・喫煙ルールの明文化/禁煙外来の案内 | 健康増進法の義務対応+αを整理する |
通勤・移動時の安全と快適 | 自転車通勤ルール整備/雨天時の傘の備え(例: 傘のシェアリングサービス「アイカサ」をオフィスに設置し、従業員が無料で使えるようにする。ウォーターサーバーや置き型社食と同様の"日常設置型"施策) | どの評価項目に対応づけられるかは申請年度の要件と事務局の判断による。単独ではなく複合施策の一つとして位置づける |
感染症予防 | 予防接種の費用補助・就業時間内接種/消毒液の設置/罹患時の就業ルール | 情勢に応じた項目。要領の最新表現を確認 |
両立支援(治療と仕事) | 相談窓口の明確化/柔軟な勤務(時差・在宅)の規程化 | 「窓口があること」を全員に周知して初めて施策になる |
メンタルヘルス | ストレスチェック(50人未満でも実施すれば施策になる)/相談窓口の案内 | 50人以上の事業場は法定義務なので"施策"としては+αを |
このマッピングの使い方は、「申請書の設問 → 該当するテーマ → 施策例 → 自社でやる/やらない」の順に埋めていくことです。全部やる必要はありません。必須項目を落とさず、選択項目は自社の健康課題に合うものから必要数を積み上げます。
5. 申請手順と費用
申請の流れはシンプルです(中小規模法人部門)。
1. 保険者の健康宣言事業に参加(協会けんぽ・健保組合等)
2. 申請ポータル「ACTION!健康経営」でアカウントを作成し、認定申請書(調査票)に取り組み状況を記入
3. 申請期間内に提出(健康経営優良法人2027は2026年8月17日〜10月16日)
4. 申請料の支払い: 中小規模法人部門 15,000円(税込16,500円)/件(請求書は2026年11月上旬頃送付、振込期限あり)
5. 審査 → 内定(2027年2月下旬頃)→ 認定発表(2027年3月)
申請書(調査票)作成の3つのコツ
1. 設問を先にすべて読んでから施策を棚卸しする。 設問の言葉に自社の取り組みを当てはめていくと、「実はすでにやっていた」項目が意外に見つかります。ノー残業デー、健診の就業時間内受診、朝礼での健康の話題 — 明文化されていないだけで実態がある施策は、規程やお知らせ文書の形にすれば適合を主張できます
2. 証跡をフォルダ1つに集める。 実施案内のメール、参加者リスト、掲示物の写真、規程類。申請時に添付を求められるかは年度の運用によりますが、審査での確認や翌年の申請、認定後の実態調査に備えて一元管理しておくと毎年の作業が激減します
3. 翌年の自分のために「どの設問にどの施策を書いたか」の対応表を残す。 認定は毎年更新です。対応表があれば2年目以降の申請は数時間で終わります
費用面で押さえておくべきは、申請料以外の「施策コスト」が工夫次第でかなり小さくできることです。前章のマッピングの通り、保険者の無料サービス・既存制度の明文化・掲示や声かけといった低コスト施策で相当数の項目に対応できます。「健康経営=金がかかる」は、少なくとも中小規模法人部門の認定取得においては誤解です。
6. 認定を取るメリット — 採用・金融・入札
最後に、認定が何に効くのかを整理します。
採用力: 求人での「見える化」
認定ロゴを求人票・採用サイト・名刺に使えます。学生・求職者が企業の健康配慮を見分ける手段は少なく、第三者認定はその数少ないシグナルです。特に知名度で大手に劣る中小企業にとって、「国の制度設計に基づく認定」は説明コストの低い信頼材料になります。
金融優遇: 融資・保険料の優遇
日本政策金融公庫の健康経営関連の融資制度や、一部の金融機関・保険会社による金利・保険料の優遇プログラムの対象になる場合があります。優遇の有無・内容は金融機関ごとに異なるため、取引先金融機関に「健康経営優良法人向けの優遇があるか」を直接確認するのが確実です。
入札加点・自治体の優遇
自治体によっては、公共調達の入札審査での加点や、自治体独自の顕彰・補助制度の対象となる場合があります。これも自治体ごとの制度設計によるため、所在地の自治体の入札参加資格・優遇制度を確認してください。
社内への効果: 「宣言」が施策を動かす
見落とされがちですが、認定取得プロセスそのものに効果があります。健康宣言と申請書の設問が「やるべき施策のチェックリスト」として機能し、これまで属人的だった健康管理が制度化される。認定はゴールというより、自社の健康施策を毎年棚卸しする仕組みとして使うのが最も価値の出る運用です。
7. よくある質問
Q. 従業員数が少なくても申請できますか?
中小規模法人部門は小規模な法人も対象に含まれます。部門の対象基準(業種別の従業員数・資本金)は申請ポータルの判定基準で確認してください。なお常時50人未満の事業場ではストレスチェックや衛生委員会が法定義務でない分、同様の取り組みを任意で実施していること自体が施策としてアピールできます。
Q. 一度取れば有効期間はずっと続きますか?
続きません。認定の有効期間は1年間で、維持には毎年の申請・審査が必要です。だからこそ、初年度に証跡管理と対応表の仕組みを作っておくことが2年目以降の負担を左右します。
Q. 落ちることはありますか?
あります。必須項目の未達(特に健康宣言未参加や健診受診率の不足)、選択項目の適合数不足が典型です。申請前に設問単位で「適合を主張できる根拠があるか」をセルフチェックしてください。
Q. 健康経営銘柄とは何が違いますか?
健康経営銘柄は上場企業から業種ごとに選定される、より上位の顕彰制度です(経済産業省と東京証券取引所が共同で選定)。中小企業がまず目指すのは健康経営優良法人(中小規模法人部門)で、その上位がブライト500という位置づけです。
まとめ
- 健康経営優良法人2027の申請は2026年8月17日〜10月16日(中小規模法人部門)。申請料は15,000円(税込16,500円)
- 申請書で問われるのは実績。だから勝負は申請月ではなく、前年度末〜春の「健康宣言参加+課題把握+施策開始」で決まる
- 施策は保険者の無料サービスと既存制度の明文化を軸にすれば低コストで積める。評価項目マッピングで「設問→施策」を対応づけながら埋める
- 認定要件の詳細は年度ごとに見直される。必ず公式ポータル(ACTION!健康経営)の最新版要領で確認する
年度物の制度なので、「今年は間に合わない」と判明することもあります。その場合も落胆する必要はありません。来期4月からの逆算スケジュールを今日引いておけば、1年後の申請はただの事務作業になります。
※本記事の日程・金額は2026年8月時点の公式ポータル掲載情報に基づきます。最新情報はACTION!健康経営でご確認ください。
